彼の仕事

俺はサンタクロースなんだと、客は言った。
ご冗談を、とバーテンダーは笑い飛ばす。サンタクロースなら、イブの夜にこんなところで酒を飲んでいるわけがない。今頃はプレゼントを配るのに忙しいはずだ。
「あれはただのパフォーマンスだよ。俺の本当の仕事はほかにあるし、もう済んだんだ」
カウンターの隅には、バーテンダーが娘のために買った人形がリボンにくるまれて置いてあった。
サンタクロースはそれを見て満足そうに笑う。
彼の仕事は、空から純白の術をはらはらと降らせ、普段は人々の心の隅で眠っている「誰かに贈り物をしたくなる気持ち」をそっと起こして回ることだ。
メリークリスマス!