王子

再婚生活 私のうつ闘病日記 (角川文庫)

再婚生活 私のうつ闘病日記 (角川文庫)

 2007年に発行された山本文緒さんの日記「再婚生活」が、こんなサブタイトル付きで文庫化されてたんですね。そうそう、再婚生活の話かと思ったら鬱の闘病記なこの本。山本文緒さんの小説は前から好きだったので、このエッセイが発行されたときも気になってたのですが、小説が好きだったからこそ当時は手が出せなかった。
 文庫はいろいろ加筆されてるそうですが、わたしが読んだのは単行本のほう。今日、何となく読み始めてしまって、重たいかなと思ってたら意外にユーモラスで。かといって大げさに茶化したりすることもなく。最終的には再婚生活がメインというか、再婚相手への愛にあふれた日記でした。
 毎日の日記なんて面白いわけがない…と思ってたのに、これが面白かった。人の闘病日記を面白かったなんて失礼かもしれないけど、わたしなら作品として出版した以上、読んで「大変だったんだねえ」って言われるよりは、「面白かった」と言われたいので、敢えて。淡々と書かれた症状や行動だけ見ていたら、結構つらい状況なんだろうけど、でもそれを淡々と書いているところに恐れ入ったというか、あとから思い返して書いたのならまだしも、鬱の渦中にいて、これだけ冷静に客観的に淡々と書けるなんて。
 いいところも悪いところも全部書いた人間くさい文章だし、作家として成功してるし夫には愛されてるしで妬みを誘発する表現もあるかもしれない。合う人合わない人いるだろうけど、わたしは好きだった。
 タイトルですが、山本さんが夫を表記するときの言葉です。王子。王子…!? あ、これは夫の下の名前が王子だとか、そういうことか!? いや、そうじゃなかったら、えええ?と混乱して冒頭で挫折しかけました。が、読んでるうちに王子って呼びたくなるほど好きな相手なんだなあと思って、だんだん馴染んできましたよ。
 しかし、びっくりした。夫を公共の場でなんと呼ぶかは、わたしにとって未だに大問題です。結婚7年目ですが、未だに答えが見つかりません。話題に出てこないのはそのせいです。
 夫って、かしこまりすぎ。旦那ってのも違うし。あと、相方とか。漫才師みたいだしなあ。彼って呼ぶのも7年目だろ?って感じだしなあ。殿って呼んでる友人もいるなあ。もういいか、配偶者で。
 そうそう、今日、これ読んでたら30才の僕が妻のことを会話の中で「女房」と呼んでいて「王子」と同じくらいのけぞりました。
「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

 ニューヨークで出版された春樹の初期の短編選集の逆輸入版みたいな本の「ねじまき鳥と火曜日の女たち」という短編。昔読んだはずなのになあ。「パン屋再襲撃」の収録版や長編「ねじまき鳥クロニクル」でも女房だったっけ…と検証しようと思ったら本が見つからないという…。昔読んだときは30才なんて、おっさんだと思ってたから、違和感なく読んだのかな。久々にこの頃の文章を読むと、あくが強くてびっくりする。エロいしさ。でも、得体の知れなさがいいな。尖っている。
 またしても取りとめないので、このへんで。