もうすぐ見える

　一ヶ月で長編を仕上げることになって、ずっとずっと書き続けている。何を書くかをおぼろげに探りながら、いろいろなシーンを書き散らし、少しずつ世界が見えてきて主人公の性格が分かってきたら、もう一度、一人称で、頭から書いていった。最後まで書き終えたのが２日前。そこから推敲の日々。
　物語を生み出すときは栄養を貯める時間がいるんだけど、推敲は、体力が続く限りやり続けられる。物語のつなぎめをなめらかにして、話の順番を入れ替えて、文章を伝わりやすくして、足りないエピソードを見つけ出しては足していく。
　０からここまでよく来れたなあ、と振り返る。どうやって来たのか分からない。だから、わたしは新しい作品を書くときは、毎回途方に暮れる。迷って迷ってうじうじして、いつまでも書き始められない。
　それでも書こうとするのは、今みたいなこんな瞬間の「やればできたじゃん」という手ごたえがあるからなんだと思う。
　長編は短編と全然違う。長編にはわたしの魂がまるごと入って、体を裏返されるような思いがする。つらくてしんどいけれど、面白かったと言われたときの嬉しさは、わたしの人生において他のどんなものにも負けない喜びだったりするので、わたしは書いているのだと思います。
　もうすぐ見える。あと、少し。