「モモ」再読

モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
有名な児童文学です。映画「ネバーエンディングストーリー」の原作者ミヒャエル・エンデが書いた小説。これを読んだのは確か小学校高学年の頃でした。それ以来、もう一回くらい読んだかな。大人になって読んだことはなく、断片のエピソード(後向いて歩かないと進まない道、とか。灰色の男たちとか、時間の花とか)と、面白かったという印象だけ残ってた本なのだけど、ふと図書館から出るときに児童文学コーナーに目が止まって見つけてしまったので借りちゃいました。
いやあ、面白かった。詩のようなあたたかい言葉に何度も涙ぐんだ。大人になって違ったことといえば、この作品で描かれている現代社会の風刺が分かるようになったことでしょうか。そして、子供のときは無敵のスーパーヒロインだと思ってたモモが、一人の弱い小さな女の子が勇気を振り絞って友達のために立ち向かってるんだ、と思いました。
時間銀行に時間を貯蓄したら利子がついて、将来膨大な時間の財産が受け取れると騙して、人々に時間の倹約をさせながら時間を泥棒していく灰色の男達は、人間ではない。人間たちが生み出した、元は無だった存在。この灰色の男達のことが、今ならすごくよく分かる。そして彼らのせいで、せかせかと心に余裕をなくしてしまって、本当に大事なものを失ってしまった大都会の人々、という風刺も、本当によく分かる。時間をつかさどる老人の存在や、一人一人の心の中にある金色の光と時間の花、甲羅に文字を浮かび上がらせる不思議な亀。物語の隅々まで本当に行き届いていて、見たことない世界がいっぱい広がっていて、出てくる人物達はみんな魅力的で。いやあ、やっぱり大好きな世界でした。
こんなにわくわくしながら本を読んだのは久しぶりだ。

ところで、今発売中の公募ガイドに新人賞を目指す人のための特集が組まれている。純文学系の文芸誌の編集者のインタビューもあってとても興味深かったですが、一番面白かったのは高橋源一郎の言葉で。読むことは自分の中に水を溜めていくこと、そして書くことは自分の中の水脈を掘り当てること、と言っていた。
わたしは本を読むのが大好きで、ずっとずっと大量の本を読んで育ってきた。本ばかり読んで頭でっかちになってるから、もっと広い世界を見たほうがいいとアドバイスをもらって、ここ数年はそれをしてきたのかな、と思う。もちろん、広いとは言い難いけれども。今、書こうとしても書けなくて、焦っていて、掘り返して水のようなものを見つけても、すぐに尽きてしまって、絶望して、またがむしゃらに掘り始めて、わたしの中は穴だらけになってしまった。また本を読もうと思う。いろんなスタイルの作家さんがいると思うけれど、わたしは人より本を読んでいる、ということを強みにしていけばいいんだと思ったりする。水を溜めよう。

今月のきらら携帯メール大賞は佳作をもらいました。ウェブの方は20日に更新かな。更新されたら作品も読めるので、またお知らせします!