白い花

 信号待ちをしていると一台のワゴン車が歩道に寄せて停車し、中から二人の男女が出てきた。彼らはそれぞれ手に白い菊と白い花束を持っていて、歩道に面して建っている一軒家の前に置いた。それから手を合わせて祈ると、また車に乗り込んで去っていった。

 今のはなんだったのだろうと疑問に思って初めて、その家の二階が全焼していることに気がついた。待っていた信号が青になったけれど、その瞬間、菊が差してあったペットボトルが倒れて水が中からこぼれ出た。慌てて駆け寄って立て直した。少しだけ関わったことに恐いような気持ちを抱きながら、後ずさる。あの男女がしたのと同じように手を合わした。