いずみが三人

 わたしの本名は、いずみと言います。

 ウクレレの朝練してました。子供達が出てくる前の公園で。ウクレレを弾きつつ、歌いつつ。そろそろ子供が出て来て遊び始めたので帰ろうかなと思ったら、小学生の女の子に捕まってしまった。うまいねーとか言われて、のせられてしまい、女の子があーたしさくらんぼーって歌うので、さくらんぼ演奏してやった。キッズ携帯というものを持っていて、ムービー機能に自分の画像をいっぱい撮ってるのを延々再生して見せてくれる。今日も撮ろう!ってたたたたっと滑り台の前に走って行くから、わたしもウクレレ置いてついていくはめに。
 テレビのレポーターみたいな口調で携帯に向かって「こんにちは、○月○日、今日は公園の滑り台の前に来ています。ウクレレ聞いたら何だか眠くなっちゃった。以上いずみがお送りしました」だって。

「いずみちゃんなの?わたしもいずみー」
「うそー、まじでー」
「まじでまじで」

 いずみちゃんは小学三年になったばかり、4月に誕生日迎えたばかり、推定9才。いずみ(9)。

「何して働いてるの?」
「働いていない」
「えー、大人なのに働いてないの? 何歳?」
「27才」
ほしのあきより若いね」

 そうか、ほしのあきより若いか。素敵なフォローですな。

 そしてなぜかすべり台で全力で遊ぶはめになる。ちょ、お姉さん年なんできついんですけれども。ひいひい。そしたら、よちよち歩きの赤ちゃんがすべり台をやりたそうにじーっと見てる。お父さんらしき人がやってきて、いずみ(9)はすべり台をとうせんぼしてお父さんにじゃんけんを挑みはじめる。(もちろん面識はない)

「最初はぐー、目何個?」
 ここでちょきを出さないと負けらしい。ぱーを出すと目が五個もあるーって笑われて負けになるらしい。
「最初はぐー、エロ何回?」
 ここでは小学生的にはぐーを出さないと負けらしい。むむむ。難しいよ!お父さん困ってるから!!w
 困ったお父さんが赤ちゃんつれて砂場に誘導して行ったのに、いずみ(9)はさらに追いかけ、一緒に遊びはじめる。
「ねえねえ名前は?」
 赤ちゃん答えられないので、お父さんが代わりに答える。
「いずみ」
「まじでー、わたしもいずみ!!」(いずみ(9))
「わたしもわたしもー。わたしもいずみー!!」(いずみ(27))
「今日は変な日やなあ」(いずみ(9))
「絶対いい子になるでー、いずみちゃんは」(いずみ(27))
「ねえねえお父さんの名前は?」(いずみ(9))
「え、たけし」
「なんだ、いずみじゃないんかー!!」(いずみ(9))
 ないだろ、さすがに。お父さんはさぞかし「なんだお前ら」って思ってただろうなあ。35才くらいの人だったなあ。災難だったなあ。最近、歩けばネタに当たるよ。ふへー。