お能を見てきました

 うちの大学では一年に一回、学生や教職員専用の教養を深めてもらおうということで能が開催され無料で見れるのです。無料だからせっせと毎年行ってます。今年で5回目か4回目。見に来ているメンバーは、毎年大体同じ傾向。留学生が結構いて、無料だから見てみようという興味本位の学生たちがいて、毎年がっつり見に来てる教職員のおばさまおじさまがいる。この学生たちは、大抵寝る。あっさりと落ちるのである。んで、留学生たちは意外にがんばる。英語のあらすじは配られているものの、この能は日本語が分からないとちょっとつらいだろうなあと私は思うんだけど。まあ、古典が読めない日本人だって条件は同じようなものなのだが。

 何度も足繁く通っていると、能の楽しみ方が分かるようになる。今どのシーンでどんなセリフを喋っているのかということを手元のテキストでちらちら確認しながら見ると、舞台にいる人がどんな心情なのかが理解できる。それを理解した上で、あの微かで僅かな動きをじーっと見てると、あら不思議。動きが全部感情を表してるのが分かるんですよ。…という楽しみ方を知らずに(もしくは日本語分からないから出来ずに)、あの動きのない、そしてなかなか進まない舞台を見続けるのは苦痛以外の何者でもないだろうなと思います。

 今回、目の前の席に留学生が座った。…背が高いので座高が高い。そして舞台真正面の位置なので、前が見えない。しかもじっとしていてくれれば、こちらも横から覗けるのに、退屈してきょろきょろ見回したり頭をあちこち動かすので、わたしもその後ろで頭をせっせと動かさなくてはいけない。

 …集中できるわけがない。

 寝ろ寝ろと心の中で念じてたのに、寝る気配もない。きいっ!とイライラしていたら、舞台は最後のクライマックス。笛と堤の音が激しくなって、ポンポンポンポンと高らかに鳴り始めた。すると目の前の留学生は、頭を縦に振ってリズムに乗り始めたのだった。彼なりの楽しみ方を見つけたようでよかったじゃん…と思った。だが笑える。

 …やっぱり集中できるわけがない。

 来年は席に気をつけて見てこよう。