リトルプレスと文房具と

 月曜日は大阪にバイトついでに、リトルプレス・ZINE専門店 Books DANTALION店主と中崎町コモンカフェで打ち合わせ。打ち合わせは大体ランチの時間。なのに、なぜか酒かスイーツを頼む店主と、なぜかどのカフェに入ってもカレーを頼むわたし。変な客だろうな…。
 このリトルプレスが面白いよ、と店主がほくほくしながらいろいろなものを見せてくれる。


http://www.books-dantalion.com/SHOP/D-0027.html
 これは本屋で普通に売ってても買う。紙の質感とデザインがすてき。

 中身がすごい充実していた。音楽家のインタビュー、写真、視点、全部好きだった。技術はプロのものを持ってる人が、自分のやりたいことをやる、作りたいものを作る、ってのもリトルプレスの意義なんだろうな。945円か。これなら欲しい。残り少ないらしい。

 

http://www.books-dantalion.com/SHOP/D-0051.html
 これは、手のひらに乗るくらい、ちっちゃい本。6冊入ってる。妙な絵とはっとさせられる文のミスマッチ感がたまらない。雑貨感覚。630円。うん、絵が好みだったら欲しい。いいかもしれない。

 で、とっておきとばかりに嬉しそうに見せられたのが、これ。

http://www.books-dantalion.com/SHOP/D-0049.html
…これ全部手書きだよ。手書きを印刷したものじゃなくて、手書き。画用紙みたいなのにペンで一生懸命書いてあるの。ほっこりする。作者と友達になったような感覚。が、しかしだ。こんなのあり? 作るほうもクレイジーだが、買う方もクレイジーだ。こ、これは分からん!店主は、これぞリトルプレスの醍醐味とばかりに、にこにこ嬉しそうに語っていた。彼に共感してきたわたしだが、境界線がここにあった。でも面白いとは思う。欲しいとは思わないけど。これが、自分の好きなアーティストの作品だったら何かもう鼻血ものだろうな。
 
 いろいろ見てたら自分も作りたくなる。そんな最近、ちょうどある人から一緒に本つくろうよという企画に誘われてる。彼がそろえたメンバーは、文章を書く人だけじゃなく、デザイナー、イラストレーター、漫画家、写真家、と多才な顔ぶれ。作りたいのは同人誌、じゃないんだよな。あの野暮ったい内輪な感じじゃなくてもうちょっと垢抜けた感じで、フリーペーパーが近いんだけど、でも無料ってわけじゃなくて、もう少し本好きとかアート好きとかじゃなくて一般の人たちに届けたい感じで…という彼にリトルプレスっていうものがあるよーとDANTALONのサイトを見せたら「まさにこんなイメージ!」ということだった。リトルプレスって、まだまだ知られていない。かくいうわたしも、DANTALIONに出会うまでは聞いたことも見たこともなかったしね。
 リトルプレスって何かって簡単に言えば、正規のルートで流通しない小規模な出版物のことで、同人誌と何が違うのかって言ったら雰囲気? 喫茶じゃなくてカフェみたいな。名前って大事だよね。
 打ち合わせ(何を打ち合わせたわけでもないけど)が終わったあと、個展準備のために中崎町ムロラボへ。文房具や紙ものを取り扱っているお店。
 文房具ってどうしてこんなに心惹かれるんだろう。わくわくする。あと、紙が好き。いろいろな紙。質感。そこに文字がならんでる様。色合い。展示で小説を見せるって一体どうすればいいかなあ、と、ムロラボ店主とわいわい話しながら、この紙かわいい!この文房具かわいい!!ねー、かわいいでしょー!と二人できゃっきゃと騒いでたのだけど、ふと、あるものを見つけて、わたしは首をかしげる。紙のベルトみたいな細長い束。
「これ何ですか」
「あ、それ、札束とか証券とか止める紙製の結束バンド。端にノリがついていて水つけてぴたっと留めるの。かわいいでしょ」
「何に使うんですか。まさか札束留めるんじゃないでしょ」
「何に使うかはまだ考えてないけど、かわいいでしょ」
…可愛いか? これは分からん。またしても境界線を発見した。でも売れるらしい。分からん。分からなくて面白い。
 DANTALIONの店主もムロラボの店主も、取扱い商品を自分が好きでたまらないと様子が溢れてて、そのこだわりが独特の世界観を生んでいるんだろうな。単に売るだけじゃなくて、訪れた人が、うわーこんなのもあるんだ、いいなーと思って、その人の世界が広がるようなお店。みならいたい。そんな小説書いてみたい。