あなたにとってのゴールとは?

 NHKトップランナーという番組をやっていて、ゲストで作家の川上未映子さんが出てたので、かぶりつきで見てました。そして、最後に発せられるお決まりの質問「あなたにとってのゴールとは?」に、うーん…と考え込んでしまった。わたしにとっての、ゴールって何だろう。「書くのがつらいのに、なぜ書くのか」という質問でも、わたしだったらなんて答えるんだろう…と考えこんでしまった。わたし、トップランナーでも何でもないけど。ずうずうしいというか、いい根性してるというか。
 小説を書いて、人に読んでもらって、「面白かった、読んでよかった」と言われると、他では味わえないほど幸せを感じる。だから、がんばってしんどくても書く、というのが、なぜ書くのかという問いの、わたしの答え。でも、何でわたしは幸せになるんだろう。
 幸せって何だろうということを最近よく考える。いろいろな啓蒙書や宗教の教えや先人の言葉やらが目に触れて、自分の実感と合わさって取捨選択していくうちに、幸せというのは、自分以外の誰かに何かを贈って、自分以外の誰かからわたしが存在していることを喜んでもらえること、なのだと思うようになった。お金持ちでも、自由に何でもできても、誰にも何も与えない人生って寂しいと思うようになった。誰にでもできるものを贈るんじゃなくて、自分にしかできないものを贈ることができれば、わたしの存在はよりかけがえのないものになる。(子供を育てるということは、子にとって母は一人なわけで、かけがえのなさにおいては究極の幸せなのだとは思う。分かってるんだけど、分かっているからこそ、今はまだ選べない。より不特定多数の多くの人に影響したいという思いが、わたしの場合は強いんだろうな。それが満たされたら、もしかしたら興味も沸くのだろうか…。) 
 小説を書いて、出版してもらって、たくさんの人に読んでもらって、また読みたいと思ってもらうことで、できるだけたくさんの人にとって「かけがえのない存在」になってしまいたい、という図々しい願望。その願望にゴールはあるんだろうか。ゴールって変な質問だなあ。トップを走るランナーにゴールはあるのかな。一回一回のレースのゴールがゴールというなら、小説を一作一作仕上げるのがゴールだけど、人生と仕事におけるゴールは、死ぬときだろうな。そのとき、どんな成果が出ていたら、わたしは満足して死ねるだろうか。お金? 名声? 賞? 本の数? たぶん、違う。死ぬまでに、わたしの物語が、誰かの人生を少しでもよい方向に転じることができていたらいい。そのためには、出会いの機会とよい物語の両方が必要で、たくさんの読者に出会えるように無名で終わらないこと、そして今よりもっともっと深く響く物語を書けるようになってること、が目標かな。
 もう少し近い目標は、学芸カフェの次の連載分を書き上げることです(締め切りが…)。その次は、個展を成功させることです。そのあとは、新しい長編を書き上げることです。遠くと近くを交互に見ながら走る。車の運転みたいにね。まあ、ペーパードライバーで、のろのろと遅いけども。安全運転でいこう。うん。