左京区

 今住んでいるところは、図書館も近いし、お気に入りのお店もいっぱいあるし、鴨川もより源流に近くてきらきら美しいし、とても気に入っているのだけど、難を言えば京都駅や四条に遠い。大阪に出たり、新幹線に乗ったりするのに、駅に行くまでが大変。だけど、ペット可のよい物件がなかなかなくて何年も探して諦めていたのだけど、ひょいっと探したらひょいっと見つかって、ひょいっと決まりました。こういうのは縁ですね。
 左京区から下京区へ11月末くらいに引っ越します。仕事へ出かける時間が短縮されて、落ち着いて書けるんじゃないだろうか、なんて期待に胸膨らませながら。しかし、ちょっと部屋を片付けただけで、どこにしまったか分からなくなって探しまくるはめになるのに、引越しとかしたらどうなってしまうのだろう。いるものが見つからないという状態にならないよう、がんばって注意深く準備しようと思う。
 立ち去るとなると、いろいろ名残惜しい。素敵カリスマ本屋の恵文社とか、かっこいいカリスマ本屋のガケ書房とか。下鴨神社糺の森とか、銀閣寺に続く疎水の道とか、のどかな鴨川の光景とか。観光地としてではなく、愛着がある。
 京の発言の次のエッセイのために「細雪」を読了。何を書こうかと思いながら、いつものように近所をぶらぶら散歩していたら、細雪に描かれている関西のものへの愛着が、わたしが6年間暮らした近所の光景への愛着と、そのまま重なった気がした。しかし、細雪の解説に実際にモデルがいると書かれていて、それに導かれて谷崎潤一郎の生涯をひもといてみて驚愕した。まだ少女である妻の妹に惚れて妻を友人の詩人に譲り渡すわ、夫ある女性と恋愛に落ちて次の妻とも3年で離婚するわ、生涯で40回は引越しをした引越し魔だわ。そして、身の回りのあれこれを次々モデルにして小説にしていくわ…。まあ、そうか。その人生にしてあの作品ありかあ…と何だか身震いした。それにしても「細雪」は穏やかで華やかで愛に満ちた小説なのでした。細雪の幸子のモデルになった、3人目の妻松子。彼女との生活がとても幸せだったんだろうなあ、なんて思った。
 さて、今回はいつもより連載を1ページ増やしてもらって、反対のページに本の広告を入れてくれるということで、本当に有難いです。京の発言の読者さんが、小説も読んでみたいなと思えるような、よいエッセイを書かねば。せっかくデビューしたんだからと骨折って交渉してくれた京の発言の担当編集者さんに感謝。毎度のことながら、いつ発行されると確約できませんが。
 あ、小説の方はネットで予約が始まっています。よもや売り切れ絶版ってことはないでしょうが、発売日に本屋を探し回る手間が省けるかもしれません。
セブンアンドワイセブンイレブンで受け取ると送料無料)
e-hon(近所の書店で受け取ったら送料無料)
オンライン書店BK-1
※アマゾンでの予約はまだみたいです。
 書影(本の表紙の写真)がまだですね。わたしもまだ見てないんです。楽しみだなあ。表紙は楽しみだけど、今は、むしろ気がひきしまるような、厳粛な気持でいる。発売日が来て、お金を出して本を買ってくれる人がいて、その人たちがわたしの本を読んだとき、出してもらったお金の分、楽しませることができるだろうか、と、どきどきしている。でも、やるだけのことはやった、出し切った。至らない分は、次で頑張るしかない。