どこでもない街で

 東京は、特別大きな都心以外は、他の街と大して変わらないんだ、という思いが、訪れるたびに強くなる。家がある。生活を営んでいる人たちがいる。それぞれの人生がある。大量の人たちがすれ違う。生々しい思いを隠して東西南北にすれ違っていく。
 馴染んだ環境から遠く離れて一人で眠ることは久しぶりだった。夜中にふっと目が覚めたとき、旧友たちとの再会を楽しんでいるときには気がつかなかった、ずれのようなものを感じていた。現在の自分とあるべき自分が、斜め下にずずっとずれているような感覚。すごく平たいセリフで言えば、あれ、わたし何やってるんだろう、という感じ。
 来てよかったな、と思う。何があったというわけじゃないけど、遠く離れたこの土地で、それぞれの生き方をしている人たちの時間に割り込んで、そこにはわたしの時間はなく、わたしは通り過ぎてゆくだけの旅人で、だからこそ、見えるものがあった。狭いところにいた自分に気がついた。
 脈拍があがるような、頭がかあっとするような、焦るような気持ちがした。恥ずかしい、という言葉をあてはめたらぴったりで、つらくなった。