第107回文学界新人賞受賞作

 今頃ですが、読んでみようかなーと思って読んでみました。

文学界 2008年 12月号 [雑誌]

文学界 2008年 12月号 [雑誌]

 受賞者は男性二人。結構対照的な小説だと思いましたが、どちらも面白かったです!
 日系ブラジル人の男性が妹を補導した警備員とやりあう「射手座」。この設定からして新人離れしてますが、この小説の面白いところは一行目から事件が始まるところだと思いました。

 妹と話をさせてほしいと電話をかけてきたのは、東京で警備の仕事をしているという二十七歳の男だった。
(「射手座」冒頭より引用)

 サスペンスフルな語り口だけど、あくまで人間を描こうとしている小説。なんとなく、G・ガルシア=マルケスの小説を思い浮かべた。真面目でかっちりした小説だと思った。
「射手座」とは対照的に、日雇いで働く適当男と、その駄目っぷりを承知で付き合ってる女のカップルが登場する「廃車」。主人公は猫木で、彼女が宝田というどこか人を食ったような名字。冒頭からして、何だか小説的に不真面目だ。え、変な小説!と思った。でも、その不真面目なおかげで、ふらふらとどっちへ行くか分からない。目が離せない。出てくる登場人物たちは切実で、生き生きとしてて、憎めなくて、愛着が沸く。このふらふらテンションが、わたしの好きな邦画みたいで面白かったです。たとえば、三木聡監督の「ダメジン」とか、橋口亮輔監督の「ぐるりのこと。」とか。
「射手座」が絵コンテがっちり書いてがっちり設定どおりに撮りきった映画なら、「廃車」はアドリブいっぱい、手持ちビデオカメラで、その場の雰囲気を重視しながら撮った映画、というイメージかなあ。
 その対象っぷり、二人の顔写真見ても伝わってくる。
 そんなこんなで、迫り来る第108回文学界新人賞の締め切りですがね。出したくて頑張ってます。が、もうどうにもこうにも、まだノーアイデアで。どうなんだろう。毎回文学界ってわたしにとって鬼門で、締め切りの時期が悪いのか、雑誌との相性が悪いのか、まだ出せたことがありません。頑張ります。