雨でもなく雪でもなく

 朝、空は澄みとおった儚い青で晴れていた。ネットで天気予報を見ると、午後みぞれ。雨でもなく雪でもなく、みぞれ。昨今はこういう合いの子のような天気まで予測するのかと、何だか嬉しい。

 気がつけば外は暗く陰り、灰色の空気の中を何本も目に見えるみぞれが本当に降ってきた。雨だ、雪だ、と言う人たちに、いちいち、みぞれだと訂正してまわる。どちらでもいいじゃないとばかりに、みんな奇妙な顔をするのだけど、ほらよく見て。
 雨だと思って眺めてみれば、落下するタイミングが一呼吸遅くて、まるで音声が遅れて届く映像みたいだ。
 雪だと思って眺めてみれば、落下するタイミングが一呼吸速くて、まるで二倍速の映像みたいだ。
 雨でもなく雪でもなく、今日はみぞれ。

 沖縄から今帰ってきたばかりだという友人と、突然すぐに提出しなくちゃいけなくなった書類を10分で仕上げてきたという友人と、夕食。みんなそれぞれの速度を持ち寄って、今ここにいる。濃密で緩やかな時間がとろとろと溜まっていく、甘い儚いひととき。

 何よりも小説が優先、という覚悟さえ出来れば、いつだってどこだって書けるのだ。そうやって書いて来たんだった。たとえ現実が出来損ないになったとしても。