小さなろうそくの炎一つで世界は輝けばいい

 二十人の人が小説を面白かったと言ってくれても、たった一人が「くだらない」と言っただけで、気になって気になってしょうがなくなる。今まで面白かったと言ってくれた人たちに失礼なくらい、悪い方の評価ばかりに囚われてしまう。こんなの違う、って分かってるんだけどね。本当は逆だ。二十人の人がくだらないって言っても、たった一人が「面白い」と言ってくれたら、胸を張って次の作品に望める人間になりたいのに。二日前の日記に書いた「コーヒー&シガレット」という映画、わたしはとっても面白いと思ったのに、退屈だったという感想をネットで見つけて驚いた。あとドストエフスキーの「罪と罰」を大胆にアレンジしたアキ・カウリスマキの映画も、きゃっきゃ手叩いて喜んだお気に入りの映画なのに「やりたいことが分からない、意味が分からない、面白くない」という評を見つけて驚いた。そういう評を見ると勇気づけられる。こんなに面白いとわたしが感じたのに、一方では面白くないと感じる人たちがいる。人それぞれなのだ。作品それぞれなのだ。表現ってそういうものなんだ。尖ってる作品ほど評価が分かれるもの。いつか、近い将来、わたしは、ある人たちには熱狂的に好かれるけれど、ある人たちには面白くないと思われる作品を生み出してみたい。

 そうは言ってもね、やっぱね、悪い評価って気になるものでしてね。そんな自分の凡人っぷりに鞭打って鍛えているところ。無難に誰からも好かれる非表現者的心持を早く脱出して、評価など超越したい。作品と読者は常に一対一なんだ。何人の人に評価されたかではない。ただ一人の読者の特別になりたい。