好きな本

 好きな音楽家椎名林檎で、好きな映画監督はアキ・カウリスマキ。でも好きな作家は、と訊かれると答えられない。訊いた相手はわたしが本好きで話題を合わせようとして訊いてくれているというのに、答えられないから会話が滞ってしまう。とっても気まずい。音楽や映画は嗜む程度なので、好きなものを選べるんだけど、小説はありすぎて選べない。大体、試みに一人二人挙げてみるんだけど、話しているうちにでもなんか違うなあという居心地の悪さを感じて、一人でテンションが下がってしまう。しかも、わたしは普段からなるべく一人の作家ばかり読まないようにしているので(作風が無意識で似たら困るので)、全部を読破した作家は少ない。ドストエフスキーが好きと言ったら、じゃあカラマーゾフの兄弟がさあと言われて、ごめんそれ読んでない、と答えて会話終了。うんわ、やりにくいな、わたしってば…! じゃあ、好きな本を挙げればいいじゃないか、と言われても、それも一言じゃ答えられない。こういう人種をセケンではオタクといいます。向こうはただの会話のつなぎに訊いてるだけなのに、オタク丸出しで熱く語っても引かれるばかり。かといって、好きな本は一言二言で語れるかってんだ。てか、たぶん忘れて語れないだけだけど。書いておくと、忘れないかな。

 好きな本は、百年の孤独ガルシア・マルケス)、日々の泡(ボリス・ヴィアン)、白痴(ドストエフスキー)、裏切りの夏(虹影)、フラニーとゾーイーサリンジャー)、存在の耐えられない軽さ(ミラン・クンデラ)、アビシニアン(古川日出男)、誠実な詐欺師(トーベ・ヤンソン)、生きてるだけで、愛。(本谷有希子)、すみれ強迫(草間彌生)、物の味方(フランシス・ポンジュ)、恥辱(J・M・クッツェー)、骨 (フェイ・ミエン・イン)、金色夜叉尾崎紅葉)、春 その他の季節 (ル・クレジオ )、城(カフカ) です。

 ああん、まだ挙げ足りない…!

 どんな本が好き?ってよく訊かれますが、これらの本の傾向と共通項、誰か分かる人教えてください…。強いて言えば、情動的な小説かな。そして、既存の小説の概念を壊すもの、かな。うおー、こんな小説があったのかー!!という感動を与えてくれた小説が「好きな小説」になるようです。万人におすすめではないな。オタク用ですが、まあ、よかったら読んでみてね。