ライフ


 ジャンルの違うものが互いに新しい視点を与えてくれる。もつれあい、はぐくみあい、反発して、違うものが生まれる。だから芸術とか表現と呼ばれるものは何でも興味があるし、何でも自分でやってみたい。矛盾するようだけど、それでいて何よりも一番に小説家でありたい。写真を撮っても、映画を見ても、仕事をしても、それを小説という形で外に出すのがわたしのライフ。

 ここ数日、デジタルカメラを持って出かけている。いつもの通学路で絵になる場所はないかと考えながら。いつもどおりじゃなくなった通学路。世界の解像度が上がる。この世界に生で触れて分かり合うためにわたしは実体を持っているんだから、フルに使わなくちゃもったいない。

 自分でやってみるといろいろなことが分かる。構図の取り方、光の具合、天気、色、背景。何度も撮っては失敗しながら、よい写真を撮ろうと試行錯誤。同じ物を写しても光の違いで写り方が変わっていく。差すような光は真っ黒な陰を作る。白く淡い光は全体を優しく包み込み、オレンジ色の電灯の光は世界を古い思い出の中のセピア色に染め上げる。思い通りの写真を撮るには光を読むことが必要なんだと思った。写真入門なんかで書いてある内容で分かった気がしてても、自分でやってみて実感として分かったときとは「分かる」の深さが違う。わたしはこうやって体で分かったものしか書きたくない。光が読めるようになれば、わたしの小説にも光の描写が登場するようになるのかもしれない。