本と映画のステキナカンケイ

 来年1月11日。元立誠小学校特設シアターの新春企画「ビブリオシネマ〜本と映画のステキなカンケイ〜」に朗読ライブで参加します。大阪公演で好評だった「三夜叉〜金色夜叉より〜」を今度はFM802などで活躍中のラジオDJ野村雅夫さんをゲストに迎え映画館の音響を使っての上演となります。詳細こちら

 先日発行された季刊誌「高瀬舟」のエッセイはこの朗読劇について書いたので、こちらにも転載します。

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連載エッセイ:浅い川も深く渡れ。
其の七「百年前の恋心〜貫一とお宮〜」


 時代は変わり技術は進歩し古いものは劣化する。でも人の気持ちは、昔も今もそれほど大きく変わらない。本を読んでいると、そんなことをよく思う。

 明治30年。西暦で言うと1897年。今から116年前、日清戦争に勝利した日本が浮かれていた時代に、尾崎紅葉という小説家が読売新聞に連載した小説が「金色夜叉」だ。許嫁のお宮が、自分を裏切り金持ちのもとへ嫁ぐことになり、それを知って激怒した貫一が、熱海の海岸で宮に捨て台詞をたたきつけ、高利貸しに身を落としてしまう。そんなあらすじだけは有名だけど、実際に読んだことがある人は少ない。この小説、地の文が華麗な擬古文調でとっつきにくいのである。でも、言文一致体で書かれた会話文は今でも通用する名台詞の宝庫で、ちゃんと読むとなんともクールでかっこいい小説なのである。

 わたしがこの作品から感じ取ったテーマは恋。恋しちゃったらもう、止められない。相手に嫌われようが、人の道に外れようが、誰かを不幸にしようが、どうしようもない。貫一にほれて付きまとう女高利貸しの満枝のしつこさや、一度振ったくせにやっぱり貫一がいいとせっせと手紙を書く宮の身勝手さや、かたくなで意気地のない貫一の行動の切なさが絡み合い、怒涛のラストに突入する。
 この面白さを伝えたいと思い、朗読劇のシナリオを書下ろし、先日大阪で公演を行った。わたしも、宮役として出演した。面白かったと言ってもらえて、やっぱり、人の心は今も昔も同じなんだと確信した。

 この朗読ライブをもう一度、新春に京都で上演する機会を得た。場所は高瀬川のほとりに建つ元・立誠小学校内にある特設シアターです。何度も映画化されたこの作品を映画発祥の地に立つ映画館で上演できる贅沢。ゲストにFM802のDJとして活躍中の野村雅夫さんを迎え、映画館の音響を使ったライブです。原作を知らない人にこそ聞いてほしいなあと思います。ぜひ!お越しください。

三者三様・異色の朗読ライブ「三夜叉〜金色夜叉より〜」
原作・尾崎紅葉  脚本・寒竹泉美 出演・寒竹泉美・野村雅夫・柳元麻見
会場:元・立誠小学校 特設シアター
日時:2014年1月11日(土)18:00から開演(★15分前開場)
参加費:1,500円(当日均一料金)



イラスト:ミホシ

大阪公演のレポートはこちら
ビブリオシネマフェア、他にも面白い企画や映画が盛り沢山です。詳細は元・立誠小学校特設シアターのサイトの特集ページをご覧ください。