サンドイッチをめぐる11の物語

 夕暮れ時に買ってきて、夜の静寂の中そっと包みを開いて食べる、そんな持ち帰りサンドイッチを売るお店「十六夜サンドイッチ店」。サンドイッチの袋の中には、小さな物語をしたためたカードがさりげなく入っている。
 そんな企画を持ちかけられたのは「月と六ペンス」という名のカフェの店主さんからでした。

 月と六ペンスは、お一人様仕様の静かなカフェ。京都のカフェガイド本で読んで気になっていて、お店のロゴマークにもどきどきして、アパートのドアを開けたらそこに素敵な空間が広がっていたのです。オレンジ色の照明の下に密やかに本が置いてあって、図書館のようだけど図書館よりもずっと居心地がよくて、バケットサンドもコーヒーもとてもおいしい。本好きの人がそっと集まるカフェなのです。何回か通っているうちに、こんなカフェに葉書小説置かせてもらえたら素敵だなあと思って、「読んでください!」と、葉書小説一式押し付けたのが始まり。その葉書小説の雰囲気が、イメージにあってたみたいでした。
 店主さんはこの企画をずっとあたためていて、しかし小説といってもなあ…自分で書くわけにもいかないし…と思ってたときに、わたしが丁度現れたわけで。わたしのほうも、以前から、カフェで、メニューが出てくるまでのちょっとした時間に読めるような小説を、テーブルに置いてもらったりしたら面白いのに。しかも、そのカフェにあった雰囲気で、空間を深めるような、カフェ小説なんて出来たらいいのにと、思ってました。一人で思ってたよりずっとずっと素敵な形で実現することになって嬉しい。
 カードサイズって葉書小説よりまだ短いし、どうなることやら…と思ったけど、案外できるもので。400字入ると物語はちゃんとつむげる。店主さんが、こんなイメージで、とキーワードをいくつかくれたので、イメージも沸きやすくて、ひとつひとつ大切に紡ぎました。出来上がってみると、サンドイッチをめぐる11の物語、11の人生って言ったら大げさだけど、何だか不思議なオムニバスに。
 十六夜サンドイッチ店は1月頃にスタートします。月と六ペンスのカフェ内で販売です。お近くの方、京都に来られる方、持ち帰りのサンドイッチの中にどんな物語が入っているか楽しみに待っていてくださいね。
 近いうちに全編ホームページにもアップして読めるようにしますよ。また詳細は後日。