映画かドラマか何かの撮影してた

 梅田(大阪です)をうろうろしていたら、撮影しているのに出会った。最近よく出会うのは、平日の昼間にうろうろするようになったからなのかな。映画だろうか、テレビだろうか。ゲームセンターの外に設置してある、ダンスするゲームで撮影してた。 よく長髪をひっつめにした小太りの男が、取り憑かれたように足を踏みならしているのを見るんだけどね。ダンスと呼ぶにはほど遠い彼らの動き。まあ、彼ら、ダンサーじゃなくて、ゲーマーだものね。かっこ悪いのは仕方ないんだけど。
 で、今日は、そのゲーム機の上で、ポニーテールの白いワンピースの少女が可憐に踊り狂っていた。手ぶりもあり、回転もあり、重心の移動も軽やかで、なんだかすごい。かっこいい。それを固定カメラで延々撮り続けていた。なんだこれ。どんなシュールな話だよ。気になる。
 ダンスする少女を取り囲むたくさんのスタッフたちを時間の許す限りずっと見てた。汗を流しながら、車を誘導したり、レフ板持ったり、雑用係にしか見えない人たちもきらきらしていた。

 マクドナルドに入る。カフェに入ってデザートと飲み物で千円という出費はなかなかね、痛いしね。100円マックポークと100円コーヒーで、計200円。PHSとキーボードが広げられれば、このさい味は何でもよし。安いチェーンカフェにたむろする女子高生たちの生態を観察するのも結構楽しい。それはさておき、そこから広大な工事現場が見える。通りを歩いていたら高いトタンフェンスに遮られて見えないんだけど、上からならよく見える。片隅に寂れた小屋と緑の濃い木がぽつんとあって、あとは何もない。草もない空き地。こういうところで、ちょっとしたストーリー撮りたいなあと妄想したりして。その実現を少しでも思い浮かべただけでくらくらする。クレーンがいるでしょ。レール引くでしょ。スタッフがいるでしょ。役者がいるでしょ。
 イメージを実体化させるのって何て大変なんだろうね。そして映像というジャンルは、作るのが大変で、受け取る側がいくらでも楽ができちゃうジャンルだと思った。写真もそうだけど。自分が関わってみるまで、こんなに苦労して作っているのだとは知らなかった。裏舞台を知ると、見るときの解像度は上がるが、それを見る人全員に強要することは出来ない。最新の技術を使った、受け取るのが楽な作品がどんどん現れてきて、何も労せず受け取る人たちは心を動かすことも忘れてしまうんじゃないだろうか。ここで泣け、ここで笑え、とスイッチ押されるように誘導されて。引っかけたい。もっと唯一無二に引っかかれ。引っかかって、残れ。苦労してでも受け取りたいと思わせたい。小説にはまだそれが出来る。まずは手にとって見てもらわないと始まらないのだが。わくわくして踏み入ったら、いつのまにか深い森を夢中で探検してた、そんな本が書けたらいいな。いつかね。