第十回「川端康成へ」太宰治 (8分半)

 次回の「京の発言」のエッセイは川端康成の「古都」をネタにしてるのですが、川端康成のことを調べてたら、こんな文章見つけたので朗読してみました。
http://www.sakkanotamago.com/roudoku.html
 この文章は、太宰治26歳のときのもの。初期の作品「道化の華」と「逆行」が芥川賞候補になり、落とされた。そのときの審査員の一人だった川端康成が選評に「作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった。」と書いたのに抗議して発表した文章。
 抗議から始まって、自分の作品がいかに他の人には認められていたかを延々語って、病気や貧乏で自分の生活がいかに惨めかを語って、そんなときに川端康成の選評を読んで激怒した、と。まあ、作品には関係ないじゃん…という恨みつらみ愚痴が書いてあるんですけどさ、しかも、
「小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。」
 などと、典雅な趣味人の生活をしている川端への当てこすりも書いててさ。いやいや、太宰さんよ、ちょっと落ち着けよ、とか思うんだけど、でも、最後まで読むと、ただの恨み文じゃない、ぞっとした余韻が残るのでした。
 わたしは彼は鬼才だと思う。その才は尖りすぎて、世間というものの中で、とても生きにくかったんだろうな、と思う。