待てない

 もうすぐ29歳だけど、29とか中途半端だから30でいいや、と思ってみて30までに小説家デビューしたいと言ってたことを思い出した。20才のときに20才でデビューすると言っていて、あれから10年弱たってしまった。焦るつもりはなかったのに、突然、焦燥感に駆られる。思い出したように、もう待てない、限界だ、と思う。
 小説に専念することに決めて何者でもなくなって半年経った。突然思い出した早くデビューしたいという気持は、前よりも激しくて、でも少し変容している。有名になりたいから、認められたいから、ではなくなっていた。一刻も早くプロになって不可避の締め切りと責任とに追われて追い詰められたいな。追い詰められなきゃ出来ない自分の性格をつくづく思い知って、これ以上、だらだらと現状に甘んじている自分が気持悪くて情けなくて、もう限界だ、と思う。
 応募しなきゃ始まらない。いや、書かなきゃ始まらない。冒頭の一文が決まって、早く書き始めたほうがいいのか、もう少し待ったほうがいいのか、見極めないといけない。早く、でも期の熟すのを待て、と、じっと待っている。もう待てないけれど、ひたすら待ち続けるしかない。