第7回「夢十夜」夏目漱石

 ようやく十夜分読み終わりました。
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 夏目漱石の有名なオムニバス短編です。第○夜と小タイトルがあって、「こんな夢を見た。」という書き出しで始まる夢の話。この話を読むまでは、夏目漱石というのは現実的な地に足着いた話、どちらかといえば日記調の話を書く人だと思ってましたが、夢十夜のぶっとびぶりや、幻想的な世界の描写に、漱石こえー!と思うようになりました。以来、漱石リスペクトです。財布の中の漱石千円札は使わず取ってあります。
「自分」が見た夢の話なので、文章の語り口自体は漱石自身を彷彿させる、中年男性の声色。しかし、めくるめく世界は、十夜それぞれ調子がまったく違って、ユーモラスだったり悲しかったりホラー調だったり幻想的だったりする。突然のように終わる話に不思議な余韻が残る。
 わたしも昔メモした夢日記を元に漱石の真似をして書いてみようと思ったのですが、全然面白いものにならない。まとまらない。小説にならない。さすが漱石。ただの夢の記録を書いただけではない。そこには彼の筆や想像力がふんだんに足されているのだと思う。もしくは、こんなまとまった夢を見てそのまま書いたというだけなら、それはそれで漱石こええ。