「檸檬」と京都と読売新聞と

2014年4月20日(日)読売新聞 朝刊 日曜版の1面に梶井基次郎と一緒に登場しました。

昔書いたエッセイがこんなふうに日の目を見て嬉しい。作家になりたくて、なれなくて、何者でもない自分に鬱々としていた時期のエッセイ。このときにしか書けなかった文章だと思う。書いていてよかった。文章を書くというのは未来の自分へのプレゼントだと思う。記事で触れられているエッセイはウェブでも読めます。

レポ「三島由紀夫を読む会&超短編を楽しむ会」

昨日は「三島由紀夫を読む会&超短編を楽しむ会」でした。

先輩作家の森山東さんのリードとフォローのもと、心ゆくまで楽しみました。ああ、小説の話をするのって楽しい!!三島はやっぱり天才だ…。三島のすごさは自分が書くようになるとよく分かる。簡潔で的確で詩的な描写。この三つが同時にそろうってすごい。その文のうまさの秘密が圧倒的な語彙力と論理を組み立てる力にある、と聞いて、なるほどなあ…と開眼した思いでした。そうなんです、語彙力ってやっぱり必要なんです。類語辞典見ながらあわあわしてる場合じゃないんです。そして、文章のよさを決めるのは「品」である。それには古典を読むしかない。というのもよかったな。そうだなあ。本当に。昔の文豪の文章は「職人の手仕事」って感じがする。今は既製品を買ってきて組み合わせました、みたいな文章がいっぱいある。

たくさんの言葉の中から的確なものをすいすい選んで、時にははっとするような組み合わせを作って遊んでみたり。そんなレベルの高い言葉使いになりたい!と思いました。しかし、課題図書の「スタア」は本当に面白かった。映画俳優が主人公のなかなかシニカルなストーリー。面白すぎてストーリーばっかりに目がいってたので、森山さんの文章の分析で、はっとさせられどうしでした。まるで面白い映画を一本見たような時間。本当に面白い評論ってのは、わくわくするエンターテイメントでもあるんだなと思った。謎解きというか宝探しというか。世界が開けていく感じ、解像度が深まっていく感じが面白かった。他の人の感想も面白かった。読書会というものを初めて参加したのだけど、これも小説の面白さを伝えるひとつの方法だなと思った。作品の選び方と参加メンバーにかかっているかもしれない。誰か一人でもその作品について深く読んでる人がいれば、遠くまでいける。


「スタア」はこの短編集に収録されています。

第二部の超短編を楽しむ会では、名前を記さずプリントしてきた500字原稿をみんなに配り、その中でそれぞれ順位をつけてもらい、多数決で一番面白い作品を決めました。意外な人が作者だったりしてそれが面白かったです。いろんな物語があった。500字だと読むのも早いし、全員分朗読してもそれほど時間はかからない。そういう意味で合評向けかも。そして、一位いただきました。びっくり。500字って文字数、初めて書いたけどなかなか面白いです。カフェ・月と六ペンスで売っている葉書小説十六夜サンドイッチ小説が600字くらいで、これは名刺サイズにも納まる文字数として作ったのだけど、500字だったらもっといろいろできそうですね。

次回もまたできたらなあと思ってますので、よろしくお願いします。

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超短編(500文字小説)】殻
 
 庭にカタツムリがいる、と妻の嬉しそうな声が聞こえてきた。
「すごく大きいの。ねえ、見に来てよ」
 すごく大きいなら、なおさら行くものか。気持ちが悪い。俺は新聞を顔の前に広げ、妻の声を無視し続ける。
「本当に大きいのよ。なんだかこの殻に住めちゃいそうなくらい」
 バカバカしさを通りこして、俺は腹が立ってくる。
「じゃあ、住んだら?」
 それっきり妻の声は聞こえなくなった。新聞をそっと下ろしてみると、妻はキッチンで夕飯を作りはじめていた。
 その日の夕食はカタツムリだった。焼きカタツムリ。カタツムリの煮物。カタツムリのバター炒め。弾力も色もエリンギに似ている。これはエリンギだと自分に言い聞かせながら咀嚼する。
「まだまだあるわよ。オイル漬けにしたから当分食べられるわ」
「殻はどうしたんだ」
 と、俺はきいた。
「ほら、これよ。似合う?」
 巨大なカタツムリの殻を背負って微笑む妻を見つめる。俺はきっと試されている。ここで答え方を間違うときっと大変なことが起こってしまうのだ。
「愛してるよ」
 と、俺は言ってみた。
「そんなことはきいてないわ」
 妻はつまらなさそうにため息をつくと、足からするすると殻の中に入っていった。
〈了〉

3回目の「三夜叉」公演とN1グランプリ

3月8日(土)京都の築100年越の京町屋「ちおん舎」で、朗読劇「三夜叉〜金色夜叉より〜」の公演してきました。3回目にもかかわらず、たくさんの人に見ていただくことができました。


金屏風に赤絨毯という金色夜叉にぴったりの舞台。

今回、京都フラワーツーリズムが主催しているノベルなびのイベントのゲストでTREESが出演しました。ついでといってはなんですが、司会をしたり進行を考えたり審査員したりしました。ええ、大忙しでした。

司会をしております。

会場から出た3つのお題で、その場で小説を執筆します。制限時間30分。

待ってる間、審査員へのインタビュートークトークの司会もやりました。審査員作家、左から都築由浩さん、小林泰三さん、遠藤徹さん。

出された作品を審査員で手分けして選考。わたしも審査員なので選考中。

審査員がひとり1つ作品を選び、プロのナレーターである樹リューリさんが作品を情感たっぷりに朗読し、うっとりと聞きほれつつ、どの作品が一番面白かったか、観客投票で優勝を決めました。


遠方から来てくれた人もたくさんいて、参加した人も観覧した人も楽しかったって言ってくれて安心しました。最後の懇親会でこんなサプライズが。

「月野さんのギター」映画化決定おめでとうケーキ!!!!嬉しくて驚きすぎて悶絶しました。
N1グランプリ、また来年もやると思います。フェイスブックページに写真がいっぱい載ってるので、よかったらご覧ください。

(写真:naomiki)

WEBで書評連載始まりました

寒竹泉美の月めくり本 (学芸カフェ)

毎月10日に更新されます。月1回1年間連載します。実は書評の連載は初めてだったりします。新しいチャレンジにわくわくします。まあ書評というよりは、本エッセイというスタンスですが。他ジャンルをまたいでいろいろな本を紹介しますので、1年間よろしくお願いします。


1月の本は「ママのスカート」。木村カエラさんが訳したキュートでビターな愛情あふれる絵本。

1月号はこちらから読めます。


2月の本はこれ。

こちらからどうぞ。



掲載媒体はかつて建築小説「ハウスソムリエ」の連載でお世話になった学芸カフェです。建築スタジオOJMMが企画・運営、京都の建築系出版社学芸出版のコンテンツとして掲載されている月刊ウェブマガジン。わたしは久しぶりの登場ですが、立誠シアターの「三夜叉」公演でお世話になった野村雅夫さんは毎年不動のレギュラーで映画コラムを描いているし、去年は三夜叉のイラストをお願いしたミホシさんも耽美イラストを連載していました。


人のつながりは面白いです。仕事をするって誰かとつながることなんだなと思う。もちろん仕事をしなくてもつながれるけど、仕事を通したつながりは射程距離が長いというか、そして深いというか。わたしが持っていないものを持ってる人とつながることができる。

来年の今頃は誰とどんなことをしてるのかな。それを楽しみに、がんばろうと思います。

【ご報告】Makuake たくさんの応援ありがとうございました!

 1月30日をもちまして、クラウドファンディングサイトMakuakeでの「月野さんのギター」映画化プロジェクトは終了しました。なんと最終的に達成率180%、応援者115人という大成功な結果!本当にたくさんの人に応援してもらってるんだなと実感して胸が熱くなりました。ありがとうございました。

 応援してくれた人のメッセージがたくさん。一生の宝物です。

 今年の4〜6月ごろから京都でロケ。そして今年の末には公開を目指して動いていきます。わくわくする1年になりそうです。
 そして、次は出演者オーディション企画が始まりました。現役の大学生の中から「月野さんのギター」の主要登場人物が選ばれます。たくさんのご応募お待ちしています!

 詳細はこちら

【ご報告】 映画館で朗読ライブしましたよ

こちらの日記ではご無沙汰してます。まずは京都の元・立誠小学校特設シアターと共同企画で行った朗読ライブの報告から!

映画館なのでスクリーンを使った演出を考えました。映写機の光を舞台のスポットライト代わりに使用。

ライブ終わってほっこりトークショー

映画と本のステキなカンケイというテーマであれこれ。


貫一役はFM802ラジオDJ・野村雅夫さん。


宮役わたし。なぜかカメラ目線。なぜだ。


満枝役の柳元麻見さん。

たくさんの人に来てもらいました。そして古い小学校の教室を改造した不思議な映画館で、不思議な時間を作り出すことができました。日本映画発祥の地で、同じ年の同じ月に生まれた小説「金色夜叉」をライブ上演する。楽しかったなあ。本当に。

また機会があればお会いしましょう。

2013年に書いたもの

自分を励ますべく、今年も書いたものの総括します。枚数は原稿用紙換算枚数です。単行本1冊が300枚くらいかな。

スマホアプリ「謎解きおひなさん京都編」京都とおひなさんの物語4作品→Kindleで発売中です。4作品全部読めます。
 ・「誕生日プレゼント」(5枚)
 ・「人形師からの伝言」(5枚)
 ・「姫の家出」(5枚)
 ・「おひなさんと縁切り大明神」(5枚)

■FB連載小説「エンジェルホリデー」家族旅行の物語
4月(ハワイ)スピンオフ動画
5月(パリ)スピンオフ動画
6月(パリ)スピンオフ動画
7月(台湾)
8月(ハワイ。4月の続編)
9月(ロンドン)
10月(日本)
11月(パリ)
12月(カナダ)※まだ連載中。12/31に完結。1月以降も連載は続きます。

(約40枚×9+動画5枚×3=375枚)

JREC会報誌Holosに連載「ちょうどよいふたり」29才の果穂と19才の幸彦の青春小説。
・第1話「ぜんざいと風花
・第2話「唐揚げと人生
・第3話「お弁当とリフレクソロジー
・第4話「ハーブティーと告白」(2014年1月末ごろ公開予定)

(各6枚×4=24枚)

iPhoneアプリ秘密の本棚ラブロマンス
※アプリでも電子書籍でも買えます。
・「身代わりの恋人」(50枚)
パピレスhontoebookjapanどこでも読書
・「愛しのドール」(100枚)
パピレスhontoブレーンライブラリー…etc

■展示「殻を脱ぐ」用物語(2枚)

■朗読劇脚本「三夜叉〜金色夜叉より〜」(38枚)

■長岡商店街パンフレット掲載掌編「アゼリア通りのピエロ」(4枚)
ここからも読めます。

■田中ましろ歌集「かたすみさがし」ウェブコンテンツ用掌編
「十センチ」(10枚)※歌集を購入すると読めます。詳細こちら

書肆清貧の書イベント用葉書小説
「旅人のカフェ」(1枚)※南阿蘇珈琲や書肆清貧の書のイベント時に購入できます。

■季刊誌「高瀬舟」連載エッセイ「浅い川も深く渡れ。」
2013年春号「ヒーローは振り返らない」
2013年夏号「元・立誠小学校特設シアター」
2013年秋号 其の六「高瀬川清掃」
2014年冬号「百年前の恋心」

(各3枚×4=12枚)

■理系女子の京大博物館探検記 ミュゼップサロンエッセイ
「二つのマリア十五原義図」
「名画の向こう側」
「物の物語」〜技術史編〜
・「石棺の眠り」(掲載待ち)

(各5枚×4=20枚)

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…ああ、あちこち散らばって大変だった…さすがに疲れました…。合計枚数は656枚でした。去年のわたしよりもがんばったと思う。おつかれ、わたし!